漢方について
漢方薬は紀元前後に生まれた中国の伝統医学の膨大な症例経験の蓄積により完成された薬物療法で、天然の植物・動物・鉱物由来のさまざまな生薬を配合して作られています。日本では5世紀に中国医学が導入されたことが記録に残されており、その後独自の進化を遂げて伝統医学として発展してきています。西洋医学が入って一時危機を迎えたものの、1976年に医療用漢方製剤が薬価基準に収載されたことをきっかけに現代医学の中で確固たる地位を築いています。
漢方薬は、望診・問診・聞診・切診といった四診という診断方法や、陰陽虚実・気血水論・五臓論という理論に基づいて処方されます。体質や状態をみた上で、それに合わせて処方するため、症状だけに合わせた処方とは異なります。
西洋薬との違い
一般的に病院やクリニックで処方される薬は西洋薬であり、伝統的に使われてきた漢方薬に対して西洋薬は新薬と呼ばれることもあります。西洋薬は臨床試験で効果が確認された成分を用いたものです。西洋薬にも生薬やハーブの成分に由来する“アスピリン”や“ジギタリス”などがありますが、多くは科学的に合成された成分を使っています。ほとんどの方に一定の効果が見込めるという点で西洋薬は優れており、確定診断できて病態が明らかな場合には特に有効です。
ただし、疾患や不調は、虚弱や冷え、のぼせ、自律神経によるものなど体質が大きく関わっていて西洋薬では効果が出にくいケースもよくあります。漢方薬は体質に合わせた処方を行い、さまざまな生薬を組み合わせることで多彩な症状や複雑な病態にも対応が可能になっています。また、単純にある症状を解消するのではなく、体質を改善しながら自然治癒力を高め、副作用をできるだけ抑える処方が漢方薬では可能です。ただし漢方薬の効果には個人差が大きく、薬理学的に作用が解明されていないものもあります。そのため、西洋薬と漢方薬をうまく使い分けることも重要です。
漢方は保険が適用されます
漢方薬はエキス剤の他、生薬を体質などに合わせて組み合わせた煎じ薬があります。エキス剤はお湯で溶かすだけですから手軽ですし、煎じ薬はオーダーメイドのようによりきめ細かく状態に合わせた処方が可能です。ご希望があればお伝えください。
漢方の効果・効能
ほとんどの病気が漢方薬で対応可能ですが、西洋薬の方が適しているケースもありますし、漢方でじっくりと複数の症状を改善していく方が合う場合があります。また、併用することで、より効果を発揮できることもあります。まえだファミリークリニックでは、患者様のご希望やライフスタイル、症状、お悩みの点などを考慮して、最適と考えられる処方を行っています。
漢方の効果が期待できる症状や疾患
- 慢性的な症状や原因がよくわからない体調不良、風邪をひきやすい、ストレスによる不調
- 冷え性、肩こり、腰痛、頭痛、低血圧 貧血
- 神経性胃炎、過敏腸症、便秘、下痢、軽度の潰瘍性大腸炎、慢性肝炎
- 花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、気管支喘息
- 月経困難・不妊・更年期障害などの婦人疾患
- 肥満・糖尿病・高血圧などの生活習慣病
- 慢性関節リウマチなどの膠原病(早期)
など
漢方の副作用について
漢方薬は長い歴史を持っており、その間に膨大な数の処方が行われてきました。その中で、重篤な副作用を起こしやすいものが淘汰されていき、安全性が高く効果の高いものが残って伝えられています。ただし薬ですから、副作用はゼロというわけではありません。たとえば生薬の『麻黄』が含まれている漢方薬は胃もたれ、食欲不振、排尿障害、不眠、動悸が起きる可能性があります。他の生薬でも、浮腫や高血圧、間質性肺炎、アレルギー症状、肝機能障害などがごくまれにですが起こることもあります。西洋薬でも同様ですが、服用をはじめて不快な症状に気付いたら、すぐに服薬を中止して医師にご相談ください。
ただし、漢方薬には効果が得られる前に、一時的に病状が悪化したような反応が起こることがあります。これは『めん眩』と呼ばれており、ほとんどは服用の継続が困難にならない程度の反応です。判断に迷うこうした症状が現れた場合も、必ず医師にご相談ください。
効果の現れ方や服用期間について
漢方薬は急性症状に即効性のあるものもいくつかありますが、長期の服用で少しずつ効果が出てくるものがかなり多くなっています。長期の服用が必要な場合は、2週間程度服用して身体の反応を確認し、処方の内容を細かく変更していくこともあります。また、途中で体質の変化や症状の改善状態をみながら処方を変化させていき、最終的に投薬が必要なくなることを目指す治療も可能です。長期の服用が必要な場合は、定期的な診察を受け、根気よく治療を続けていきましょう。